一般社団法人ニューメディアリスク協会主催の仮想通貨・ブロックチェーンフォーラム2018とはフィンテックの中でも、特に仮想通貨とICO、ブロックチェーンの可能性とリスクに対する理解を深め、ブロックチェーン技術を安心して活用できるよう周知することが目的のイベントで、金融庁が後援し、SBI証券、DMM.comなどが協賛で行われました。
ICO規制が強化され、業界の発展が阻害されかねない状況にあるが、フォーラムでは、ここ最近ICOの質が高まってきており、優良な案件が増えているとの意見が上がった。また、日本でもICOが出来る制度づくりを要請する声もあがった。
予定プログラム
14:00~14:05|開会のあいさつ
【講演者プロフィール】
内閣府大臣政務官
村井 英樹 (ムライ ヒデキ)氏
14:05~14:50|基調講演 「フィンテックのリスクマネジメントー注目を集める仮想通貨・ICOの可能性とリスクー」
昨今のフィンテックにおいてキーワードの一つとなっているのが「仮想通貨・ICO」や「ブロックチェーン技術」です。昨年4月に改正資金決済法(いわゆる仮想通貨法)が施行されたこともあり、わが国でも個人・法人を問わず仮想通貨への関心が高まっています。基調講演では注目の集まっている仮想通貨やICO、ブロックチェーン技術の可能性とリスクについて解説いただきます。
【講演者プロフィール】
株式会社bitFlyer
加納 裕三(カノウ ユウゾウ) 氏
1976 年生まれ。2001 年に東京大学大学院工学系研究科修了後、ゴールドマン・サックス証券にてエンジニアとして自社決済システムの開発、トレーダーとしてデリバティブ・転換社債トレーディングに従事。2014 年 株式会社 bitFlyer を共同設立。日本ブロックチェーン協会(JBA)代表理事として 2016 年の「仮想通貨法」の成立に尽力。オリジナルブロックチェーン「miyabi」を共同開発(関連技術の特許は一部取得済み、一部申請中)。2016 年国際会議サイボスにおいて金融サービス分野の形成に貢献した金融イノベーターの 1 人に選出。
過去世界49カ国を旅し、エベレストのベースキャンプまで登山。
14:50~15:20|講演 「ブロックチェーン・スマートコントラクト技術の可能性とリスク」
近年、仮想通貨やICOの盛り上がりと共に、その基礎技術であるブロックチェーンへの関心が高まっています。
ブロックチェーン技術や、その応用であるスマートコントラクトは、金融システムだけでなく、医療や法律など多くの分野で応用可能な技術として期待されています。 一方で、取引所や個人の仮想通貨資産を狙った盗難や、投資家を狙う詐欺などの犯罪も増加傾向にあり、消費者にもサービス提供者にもリテラシーの高さが求められています。
本講演では、ブロックチェーン技術の概要を解説し、その可能性と現在考えられるリスク、そのリスクへの対応方法などについて議論します。
【講演者プロフィール】
株式会社DMM.comラボ
加嵜 長門(カサキ ナガト) 氏
株式会社DMM.comラボ・スマートコントラクト事業部エバンジェリスト。ビッグデータ活用基盤の構築に携わり、SparkやSQL on Hadoopを用いた分散処理技術やブロックチェーン技術の研究開発、事業提案などを担当。共著に『詳解Apache Spark』(技術評論社)、『ビッグデータ分析・活用のためのSQLレシピ』(マイナビ出版)、『ブロックチェーンアプリケーション開発の教科書』(マイナビ出版)
株式会社DMM.comラボ
篠原 航(シノハラ ワタル) 氏
株式会社DMM.comラボ・スマートコントラクト事業部テックリード。サーバサイドの設計・実装やビッグデータ基盤の構築に従事、計算リソースの効率化や継続的デリバリ、デプロイなどの開発支援に携わる。暗号通貨関連ではウォレット周りの実装を担当。得意な分野は分散システムやシステムの高可用性など。共著に『ブロックチェーンアプリケーション開発の教科書』(マイナビ出版)
15:30~15:40|講演「ニーズ高まるブロックチェーン人材への対応」
仮想通貨の基盤技術であるブロックチェーンは、さまざまな業界で活用が進み始めています。しかし、ブロックチェーンに精通した人材は少なく、採用や教育は今後重要なテーマになります。
【講演者プロフィール】
株式会社インロビ
後藤田 隼人(ゴトウダ ハヤト)氏
株式会社インロビ 代表取締役。1987年生。大学卒業後、株式会社エルテスに入社し、執行役員などを歴任。2014年に株式会社インロビを創業し、仮想通貨・ブロックチェーン関連メディアやブロックチェーン人材に特化した求人サイトを運営。
15:40~16:00|講演 「仮想通貨、情報銀行、今後求められるデジタルリスクマネジメント」
テクノロジーの発達と普及に伴い金融事業者をとりまく事業環境が急速に変化しています。ネット銀行・ネット証券、仮想通貨交換業、情報銀行などの新たな事業に取り組む事業者は新たなリスクと向き合う必要があります。サービス提供を行う事業者としては、本人確認や本人認証、個人情報の取扱いをはじめとしたリスクを低減し、企業の社会的責任を果たすことが重要となります。PEPs、反社会的勢力などスクリーニングから包括的なAML対策のためのデジタル社会に適応したKYCの手法について解説いただきます。
【講演者プロフィール】
株式会社エルテス
平野元希 (ヒラノ モトキ)氏
株式会社エルテス 執行役員。早稲田大学卒業。これまでデジタルリスク解決のための支援を200社以上に実施。企業のリスク顕在化時の危機管理広報支援の実績多数。西日本営業部長、社長室長を経て2017年5月から現職。㈱エルテスセキュリティインテリジェンスの取締役も兼務。デジタル社会の発展に伴い発生する課題解決のための新規事業開発と海外企業とのアライアンスの責任者を担う。
16:00~16:30|講演 「日本におけるICOの必要性と可能性」
昨年はビットコインをはじめとした仮想通貨だけではなく、新規に仮想通貨を発行してプロジェクトに必要な資金を調達する「ICO(Initial Coin Offering)」も大きな話題となりました。ここでは、ICOの持つ可能性やリスクについて解説いただき、健全に発展するための方法を探ります。
【講演者プロフィール】
株式会社ビットポイントジャパン
小田 玄紀(オダ ゲンキ)氏
1980年生。東京大学法学部卒業。大学在籍時に起業し、後に事業を売却した資金を元にマッキンゼー出身者らと共に投資活動を始める。「頑張る人が報われる」をコンセプトにして起業家や社会起業家の事業立上げ・経営支援を行う。株式、FX、債券などの投資にも精通し、仮想通貨取引にも携わる。2016年3月に上場会社子会社として初の仮想通貨取引所であるBITPointを立上げ、同社代表取締役に就任する。
16:50~17:50|パネルディスカッション「仮想通貨・ICOにおけるリスクとは?」
パネラー
金融庁 監督局審議官
水口 純(ミズグチ ジュン) 氏
金融庁総務企画局審議官(監督局・国際担当)。国際担当としてIOSCOやIFRS財団モニタリングボード、監督局担当として証券会社・運用会社等の証券分野、仮想通貨交換業者やノンバンク等のモニタリングを担当。省庁横断的なコンプライアンスリスク検討の取組みにも携わる。2017年9月より、IOSCOのアジア・太平洋地域委員会議長。2013年から3年間、LEI(取引主体識別子)規制監視委員会(ROC)の副議長、そして2003年から4年間、金融安定化フォーラム(金融安定理事会(FSB)の前身、バーゼル)事務局メンバーを務める。
東京大学法学部卒業(1987年)、ハーバード大学ケネディースクールで公共政策学修士号(MPP取得(1991年)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所
河合 健(カワイ ケン)氏
アンダーソン・毛利・友常事務所パートナー。フィンテック分野の法務に精通し、仮想通貨取引所等の仮想通貨関連企業及び大手金融機関等に対して、仮想通貨(仮想通貨交換業登録、仮想通貨ファンド、ICO等)及びブロックチェーンに関するリーガルアドバイスを多数行う。事業者団体である日本仮想通貨事業者協会の顧問弁護士。また、大手金融機関においてデリバティブ取引等の市場業務に約15年間従事した経験を踏まえ、金融規制法、デリバティブ取引、仕組商品、金融商品関連紛争等に関し、金融実務に即したアドバイスを行うことを得意とする。
株式会社ビットポイントジャパン
小田 玄紀(オダ ゲンキ)氏
1980年生。東京大学法学部卒業。大学在籍時に起業し、後に事業を売却した資金を元にマッキンゼー出身者らと共に投資活動を始める。「頑張る人が報われる」をコンセプトにして起業家や社会起業家の事業立上げ・経営支援を行う。株式、FX、債券などの投資にも精通し、仮想通貨取引にも携わる。2016年3月に上場会社子会社として初の仮想通貨取引所であるBITPointを立上げ、同社代表取締役に就任する。
AnyPay株式会社
山田 悠太郎(ヤマダ ユウタロウ)氏
AnyPay株式会社 ICOコンサルティング事業部 責任者。東京工業大学大学院 MOT 修了後、株式会社ドリームインキュベータに入社。戦略コンサルタントとし て製造業、エネルギー、不動産等の兆円企業を中心に全社戦略・新規事業戦 略策定に取り組む。その後 PE ファンド/コンサルティングを行う独立系ファームに執行役員として参画。 ミッドキャップ企業を中心に、経営再建、ハンズオンでの新規事業立ち上げ等に従事。
AnyPay 株式会社では、フィンテック関連企業への投資検討、ICO 実施企業へのコンサルティングに従事。
株式会社Aerial Partners
沼澤 健人(ヌマサワ ケント)氏
仮想通貨取引記録支援・税理士紹介を行う『Guardian』、仮想通貨取引計算ツールである『G-tax』を提供する株式会社Aerial Partners代表。ALISをはじめとする複数のICOプロジェクトの顧問を務めており、一般社団法人日本仮想通貨税務協会理事も兼任。
モデレーター
一般社団法人ニューメディアリスク協会 理事長
中村伊知哉
17:50~18:00|閉会のあいさつ
一般社団法人ニューメディアリスク協会 理事長
中村伊知哉
想定するご来場者
- 仮想通貨及びブロックチェーンに関する企業の経営者、団体の理事
- 仮想通貨及びブロックチェーンを事業で検討中の担当者
- システム開発やリスクマネジメント等を支援する事業者
- 報道関係者
- その他、仮想通貨、ブロックチェーンに関心があるすべての方
日時 | 2018年5月11日(金)14:00~18:00( 開場 13:30~ ) |
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場所 | ベルサール神田 (東京都千代田区神田美土代町7住友不動産神田ビル2F) |
定員 | 300名※参加者多数の場合は抽選とさせていただきます |
参加費 | 無料 |
主催 | 一般社団法人ニューメディアリスク協会 |
協賛 | 株式会社SBI証券、株式会社DMM.com、SOMPOリスケアマネジメント株式会社、アンダーソン・毛利・友常法律事務所、株式会社ビットポイントジャパン、株式会社PASSION PROGRESS、カウンティア株式会社、株式会社エルテス、株式会社インロビ |
後援 | 金融庁、消費者庁、一般社団法人 日本ブロックチェーン協会 |
ICOの利点
ICOはスタートアップ企業にとって有利な資金調達手段だ。銀行からの融資が受けづらいなどの制約があるスタートアップが、ICOでは、短期間で、巨額の事業資金調達が可能なので、迅速にプロダクト開発に着手できる。また、経営の独立を保てるといった利点がある。
ビットポイントジャパンの小田玄紀代表取締役によると、IPOは資金調達完了までに2〜3年以上かかるのに対し、ICOは3〜6ヶ月ほどで済む。調達額については、クラウドファンディングが数百万〜数千万円ほどなのに対し、ICOは数百億〜数千億円の調達も可能。今年3月末に完了し、大型のICOとして注目を集めたチャットアプリのテレグラムは、17億ドル(約1857億円)を集めた。
一方で、資金調達後に持ち逃げをする詐欺や、悪意はなくても、事業設計が不十分で計画倒れに終わるICOが多いことが問題になっている。ICOによるプロジェクトの大半が、ホワイトペーパー通りにいかないのが現状だ。現在、日本の規制の枠組みにおいては、日本居住者向けにICOのトークンを直接的に販売することはできない。理由は投資家の保護にある。規制整備において、ICOによるイノベーション促進の面とのバランスが求められている。
IPO (initial public offering) =日本語では「新規公開株」や「新規上場株式」
ICOトークンは証券か仮想通貨か
エニィ・ペイ(AnyPay)社でICOコンサルティング事業部の責任者、山田 悠太郎氏は、世界と日本ではトークンを議論する際の論点が異なると指摘する。多くの国は、トークンの扱いを「有価証券性」で議論している。日本は一部それに加え、「仮想通貨性」で見ているという。
同氏によると、ICO実施時の問題を議論する時、世界では、ICOトークンが有価証券になりうる性質があるか、これを当局に届けずに行うことが違法になるかが論点となる。一方で日本は、世界で唯一、仮想通貨性に基づく仮想通貨法があり、これがICOを考える時の軸となる。規制の厳しさに加え、この独特の仮想通貨性というものにより、海外ICOは日本市場参入のハードルを高く感じているという。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナーの河合健弁護士によると、仮想通貨の定義や仮想通貨交換業というものがあるのは、国レベルでは日本のみ、世界的な認識としては、仮想通貨は金融商品の一つに近く、既存の有価証券のルールに頼るのが一般的となっている。有価証券にあたるものを、その枠組みを無視してICOを行なうのはよくないとの考えから、現行法の枠組みで考えようとしている。また、仮想通貨という新しいものに対し、法制度を一から設計するのは容易ではないと主張した。
ICOの詐欺撲滅へ
日本には、仮想通貨の独特な法的枠組みがあり、さらに仮想通貨を取り巻く規制は厳しくなってきている。ICOを含め業界のイノベーションを止めないためには、どのような策が考えられるか。
河合弁護士は、一つのトークンを全面禁止しても海外で購入できるため、通貨は流通し続けると考える。必要なのは、ICOトークンの発行体が、情報を開示すること、トークンの安全性に一定のスタンダードを設けるといった規制の枠組みを与えることだ。海外の動きを参考にしながら、投資家保護とビジネスを促進する枠組みを設定するべきと提言した。
規制整備と、ブロックチェーン技術の組み合わせで、ICOの健全化が加速するのが望まれる。ビットポイント小田代表取締役は「ここ4ヶ月くらい良いICOが増えてきている」と話す。エニィ・ペイの山田氏もこれに同意した。同氏によると、ICOは市場規模よりも、実は件数が伸びており、ICO実施企業間の競争が発生している。そのため、より良いホワイトペーパーを出そうとする意識が芽生えているという。事業設計や情報開示、経営陣の覚悟を含め、質の高いICOが増えている印象があると、前向きな認識を述べた。